地理とネットから見えてくる可能性

リモートワークなど、ある程度の物理的な要因を無視できる現状でも完全に地理を無視できるわけではないため、両方を視野に入れつつ考察するブログ

北九州市という過小評価される都市

福岡市に対して人口が減少する北九州市

政令指定都市であっても人口が減少する北九州市

衰退した要因を知れば納得できるが、現在はその問題点も解消しつつあり、本来ある地理的ポテンシャルから考えると非常に過小評価されています。

※ 追記
2023年の記事を見るに社会動態では増加のようですね。かつては九州第一都市であった分、当時の労働層による人口オーナスの影響が大きいのでしょう。北九州は人口減少が激しいと言われますが、実情は必ずしも悪いわけではないと判断できますね。

本来ある地理的ポテンシャル

衰退の要因は後述するとして、まず最初に簡単に地理的ポテンシャルを記述します。

言うまでもなく物流的に日本屈指の重要な拠点です。本州と九州の接続点であり、瀬戸内海と日本海の出入り口であり、東シナ海日本海の出入り口です。さらに水運で松山と協力すれば阪神以西ほぼ全ての可住地域の物流をより効率化でき、誇張して言えば物流的に日本のシンガポールとも言える場所です。また、日本におけるその他重要な物流拠点(京浜、阪神など)とも距離が離れており、災害の多い日本において物流の可用性を担保するためにも重要です。

交通の要所となることからモノだけではなく人も集まりやすく、産業を偏らせなければ横浜や神戸の様に異国情緒溢れるおしゃれなイメージを持たせることが本来は地理的にしやすい街です。(歴史的には長崎が該当)

また九州南部は台風等の災害が頻繁に生じますが、福岡市と同等に北九州市は非常に安定しており、工場の立地をはじめ産業集積地として恵まれた土地です。

(青線が海上輸送経路で、ピンク線が鉄道による貨物輸送経路、白線が自動車道)

トヨタ自動車が愛知以外の日本工場に北九州付近と苫小牧(北海道)付近を選定したのも非常に頷けます。おかげで再生可能エネルギーを安定供給源化させるために必要な蓄電池としても使用でき、褐炭などからも生成できる(非常に馬鹿らしい政治的な介入および、そのプロパガンダに流される人々が存在しなければ)現実的なエネルギー資源となる水素を補給できる水素ステーションも存在し、水素の主なコストとなる輸送費も水素運搬船の誕生により交通インフラの要所となれる北九州においては非常に大きな利点となります。水素使用量を増やすためモノレールの非常用電源を水素電池にする意向を示すなどして、国、トヨタ川崎重工岩谷産業などから重要投資拠点であることをアピールし、資金が継続して北九州に流れる様にするべきです。

EVや水素等の話は後述します。

 

人口減少の理由

日本屈指の地理的ポテンシャルを持ち、八幡製作所の様に明治時代から日本を支えてきた北九州市が衰退した理由は多数あります。

  • 神戸と同じく中心地に可住地が少ない
  • 第二次産業の企業が強すぎたため産業に偏りが生じた
  • 利便性の良い飛行機が存在しなかった
  • 大学の不足
  • ヤクザ等の印象の悪さ
  • 県庁所在地ではない

他にも理由はありますが結果的に福岡市に大差をつけられ、九州民の上京第一候補、企業の九州支店第一候補が福岡市となった現状では巻き返しが絶望的な状況となっています。

先に政令指定都市に移行したのは福岡市ではなく北九州市ですが。。。

神戸と同じく中心地に可住地が少ない

神戸の中心地である三宮と同じく、北九州市最大の中心地である小倉の周辺は非常に可住地が限られています。

様々な要因が密接に関わっていますが、この土地の無さは非常に多くの他の要因と絡んでいます。

神戸が関西圏でありつつ天然の良港であった様に、北九州は非常に地理的に重要であることも起因して明治の産業革命の時代から既に多くの土地が産業で利用されていました。そのため神戸同様にある一定以上都市が成長してしまえば土地の無さがボトルネックになります。既に強力な産業が限りある少ない土地を占有していたため産業の多様化が進まず、時代的に既存産業が斜陽化してしまうと当然人口は減少します。(多様化を怠るとアメリカのデトロイトのように衰退する可能性が高まります)

大学も土地がないため北九州以外の土地に新規キャンパスを設立する方が楽です。(かつて北九州の国立大学である九州工業大学情報工学部のキャンパスは飯塚市に新設されました。)政令指定都市であるにもかかわらず国立で総合大学が存在しないほど大学に恵まれておらず、当然大学に恵まれていなければ新規産業も自発的に発達しにくいため、産業の多様化を阻害します。

空港の拡充も土地が少ない場合難易度が上がります。旧北九州空港(2006年以前)は滑走路が短くてジェット機が利用できず、プロペラ機しか利用できませんでした。他にも旧滑走路は霧による欠航など様々な要因により利便性が著しく悪い空港であり、昔は北九州市が九州1の経済都市であっても支店設立を福岡市にするのに十分な理由となります。福岡空港の利便性は誇張抜きに日本1です。そのため人が集まりやすい都市が福岡市となり、より最先端であるがゆえに、おしゃれで文化的な魅力を福岡市が持ちやすい流れを作り、心情的な魅力度も福岡市に軍配が上がります。SNSの普及もあり、おしゃれ度は思っている以上に重要でしょう。

改善策は十二分にある

現在進行形で改善しており、今は改善できていなくても改善する方法が十二分にあります。

 

ヤクザに関しては今となっては特に意識しなくても大丈夫です。北九州市は非常に重く捉え、本気で改善して今となっては特に気にする必要はありません。東京の池袋や錦糸町などの方が変な人が多くいます。知り合い、知り合いがいなくてもSNS等で実際に聞いてみると良く分かるはずです。

 

空港に関しては埋立地新北九州空港を建設し、福岡空港の様に市街地の中心地ではないため24時間空港化できており、スターフライヤーなどを活用すればお得に利用できます。バスで小倉駅から30分でアクセスでき、鉄道建設はまだできていませんが完成できれば利便性が向上し、24時間空港であることから物流インフラとして非常に北九州市に限らず日本にとって重要な空港となります。

 

リモート化によって、ある程度のインフラが整った地方の価値が高まったことは様々な恩恵をもたらします。北九州市小倉市八幡市戸畑市などの合併前の各都市の中心地に価値を見出すことができます。特にかつての八幡市の中心地黒崎駅周辺などに価値を見出せることにより、可住地の無さをある程度改善する道筋が立てられます。

比較的リモート化しやすく、小倉駅周辺のインフラでなくともコスパ的に問題ないIT企業の誘致等により黒崎駅折尾駅周辺の再開発が成功できれば、小倉駅周辺以外に住みつつもある程度利便性を維持した場所に住むことが可能です。

ちなみに沿岸部の工場の新設も下関や大分の中津方面とも協力すれば可能です。北九州には直接関係なくとも、北九州市が中心となる都市圏である関門都市圏にとってはプラスであり、間接的に北九州にとってもプラスです。

黒崎駅周辺が副都心として機能できれば、小倉方面と黒崎方面で水源の分散が可能であり、政令指定都市1の人口増加都市である福岡市の圧倒的弱点である慢性的水不足に対してより優位性が生じます。本来、福岡県全体で見ると水資源からも福岡市の一極集中は良いこととは言えません。福岡市は福岡導水などにより努力していますが、福岡市と北九州市の両都市で交流が活発でありつつ、分散しつつも両都市が成長できていることが理想的です。

水資源以外にも、そもそも福岡空港は都市部に近いがゆえに便利であり、近いがゆえに非常に危険です。民間か軍かという事情を無視すれば普天間以上に危険です。頑張って滑走路を拡張していますが、危険であることには変わりありません。福岡市のためにも北九州空港は非常に価値ある空港となり得ます。

さらに視野を広げて福岡市を中心として関門都市圏、久留米都市圏、熊本都市圏を有する強力な経済圏が構築されていることが九州民のみにならず日本としても理想的です。簡単に説明すると関西の大阪、神戸、京都の様な独立しつつも一つの経済圏と成立する経済圏です。うまく立ち回れる人であれば問題ありませんが、わざわざ東京に縁もゆかりもない九州民が上京して疲弊し、さらには東京自体も無駄に混雑する様な状況は非効率すぎます。無駄に金銭的、時間的コストが上がるだけで裕福度は増しません。とは言っても九州経済圏のみに閉じこもるのもそれはそれで問題なので、程よく交流できる枠組みが必要でしょう。

元来日本は一極集中国家ではなく、各地方に有力な権力者、経済圏が確立されており、現ドイツのような各地方が強く、各々の頑張りの結果として最終的に国家としても強力な組織を維持できるポテンシャルを秘めている国です。この各地方が強い国は革新的なことを行いつつも安定力を保持することが可能です。仮に東京が間違った道に進んだとしても大阪、福岡などが軌道修正できるポテンシャルを秘めることができれば結果として国家としても安定して国力を維持できます。無駄に地方交付税に群がるだけの自立心のない地方に価値はありません。(国レベルですら本来淘汰されるべきだが既得権に群がって生き残っているゾンビ状態ですが、、、)幸運にもお隣の福岡市は自身の役割を理解し、自立心のある責任感の強い都市であるため、連携して発展すべきです。

 

大学に関しては様々な大学が様々な形で統合しており、統合の流れが関門都市圏(北九州市下関市など)に存在する大学にも波及し、全国的にも求心力のある大学を設立する必要はあるでしょうが、一応素材(九州工業大学福岡教育大学九州歯科大学北九州市立大学下関市立大学など)は揃っています。より理想を言えば「つくば」や「けいはんな」のような戦略的な学研都市として若松にある北九州学研都市がうまく機能できれば良いでしょう。一応早稲田大学北九州キャンパス、九工大、市立大、福岡大、産業医科大など、大学がそこそこ集積していますが、九州地区でやはり強力な九大のキャンパスが一つは欲しいところです。

産業に偏りが生じたと上述したため工場が集積が多少悪いかの様に記述しましたが、研究都市がうまく機能できればその研究結果を試す絶好の機会が近場にあるという非常に魅力的な要素でもあります。

あと話は飛躍しますが、北九州に限った話ではないが大学教授が研究内容を活かして起業して儲けられる様な制度を作るべきであり、その起業した企業に大学院生が参加して、お金をもらいながら研究できる環境を作り、自然と既存のゾンビ企業を無視してスタートアップに入社できるような社会を作らない限り大学だけ作っても意味はないでしょう。良い大学が存在するだけでは結局学生が就活後に東京に吸われるだけであり、技術的な目線、経営的な目線を持つ人事が少ない企業(特に成長しない大企業)がやりがちな本当に優秀な人材の飼い殺しなど日本自体のゾンビ化は止まらないでしょう。また投資家は基本的に技術の目利きができないので、権威性のある大学のブランドで釣って有益なスタートアップに資金が集まりやすい枠組みが必要です。

普通に住みやすくお買い得

家賃等はかなり抑えられつつもインフラはかなり整っており、フルリモートなどで特に居住地に縛られずに住む場合は日本屈指のコスパの良い都市です。

フルリモートではなくとも北九州を本社とする大企業は多く存在することから、ある程度雇用も存在し、インフラの維持も現実的です。また仮に博多駅周辺にオフィスがあったとしても北九州であれば十分通勤圏内です。東京に勤めつつ、横浜に住む様なものです。

可能なら下関と合併すべき

下関が福岡県、もしくは北九州が山口県に変更されつつ、北九州市政令指定都市であるため、権限、財源を統一させるために下関を吸収合併する必要があるので非常に移行コストはかかりますが、冪論で言えば官民一体となって北九州に限らず日本にとって有益な開発を行うためには合併すべきです。

関門海峡付近は大きな区分けとして4つに分けられます。本州の瀬戸内海側と日本海側、九州の瀬戸内海側と日本海側に分けられます。この4地区で協力して効率良く開発を行うべきです。あと多少脱線しますが効率化に関して、そもそも官公庁と仕事をすると非常に煩わしい手続きが多すぎかつ、無駄に制約が多すぎることも計測する必要もなく非生産的でブラック企業(というより業界レベルでブラック)の温床となるので改善するべきです。

ちなみに合併後はヤクザのせいでイメージの悪さを解消するため、西京市と変更すると良いかもしれません。もともと合併後の市名の最有力候補ですし、壇ノ浦の戦いによって安徳天皇が眠る地なので京と名乗ってもいいと思います。

( ↑ 北陸、北海道も結ぶことができれば、国内海運を無視すべきではない日本海側都市圏、関門都市圏ともにより良いですね)

ちなみに良く「目指せ100万都市復活!」的なことを聞きますが、正直100万都市である必要はないと思っています。人口減少と言えど世界的に見ればかなりの人口密集地域です。交通の要所ゆえに人が増えすぎて渋滞を招くことは北九州というより西日本にとってデメリットです。社会人が現代に即した価値を提供できる様に継続して学習をしない時点で行政側がいかに制度を整えても意味はないでしょうが、北九州市民一人当たりの所得を増やすことの方が重要です。医者、弁護士、公認会計士の様な資格を元にして仕事を行う場合は多少異なりますが、一般的には学生時代に無駄に必死に勉強させるのではなく、社会人になっても継続してスキルを磨き続けることが大事です。(社会人学生枠の拡充や、過労防止だけでなく週休3日による学習時間、消費時間確保など。余程の記念日以外祝日は基本不要、GW等の混在は愚か。)仮に人口を増やすことを考えるのであれば、北九州は横ばいだが関門都市圏全体では増加といった流れを作る方が有益です。(そのための黒崎や折尾の副都心化。)

北九州を始め物流を無視すると世界物流の主導権を釜山等に奪われ、価格や納期等の競争力を低下させ、市場に流通する商品のサプライチェーンの多くを他国に依存する流れを加速させます。必要以上にエクセル管理を行うだけの人が増え、実際に手を動かす経験が国内から減るような状況を放置すれば世界物流の日本の地位を低下させやすく、物流以外にも現場レベルの技術に知見がある人材が減り、コロナのように異常事態が発生すれば自力の弱さから経済の立ち直りも弱い状態を招くだけです。
金融国家や、アップルの様に設計レベルで世界トップの競争力があればサプライチェーンの海外依存度が高くてもそこまで問題ないでしょうが、円安政策、従業員数の多い電気業界の現状ではかなりの問題点です。

誤解無いように補足として円安が絶対悪とは主張していません。本当に悪いのは急激な為替の変動であり、かつての民主党政権時の急激な円高も、アメリカの高金利による急激な円安も両方悪い状況です。

水素戦略について

水素の話をするだけでEV否定派と勘違いしたり、EVと自動運転技術を同一視する残念な人もいますが、EVを否定しているわけではありません。資源国でもないのにエネルギー戦略として特定の資源に集中することは愚の骨頂であり、EVだけではなく水素も視野にいれることは非常に合理的だということを論じているだけです。原発を再稼働させていないことは論外として、バッテリーを作る際にレアアースを必要とし、そのレアアースの生産シェアは圧倒的に中国であり、中国共産党は戦略的に行っています。一般製品であれば全く問題ありませんが、政治リスクを大いに持つ国に経済活動の根源となるエネルギー供給源を依存してしまう現状を良しとする勢力にははっきり言って軽蔑します。おそらく学がないのでしょう。ノルウェーのように水力発電のみで電力を賄えるため、雪国であったとしても内燃機関を捨てるのは良く理解できますが、EVのみに移行することは一考の余地があります。とは言えノルウェーはまだ中国共産党の政治リスクも地理的に低いのでEV一辺倒でも良いと判断できますが、日本では言うまでもありません。ヨーロッパも国によって、アメリカも州によって大きく異なりますが、中国共産党やロシアを驚異とし、政治リスクを避けるために水素の開発は進んでいます。本当の意味で中国の方々と今後も良好な関係を維持しつつ、日本人が安定して経済活動を行うためにも、中国共産党に重要な部分を握らせるような状況は避けるべきです。歴史が示唆している通り政治リスクに常識は通用しません。やらかす国は本当にやらかしますし、なにより中国共産党は契約より面子を重要視する組織です。

スマホの台頭で電気産業が大きく変化したことを意識して自動車業界の未来を危惧している人も多いのでしょうが、EVに関してはエネルギー問題に付随して政治リスクも大きく関わるので同じではありません。そもそも自動車はスマホとのコモディティ化度合いが異なりますし、なにより電気業界はソフト面での開発環境を整えず、ソフトウェアエンジニアから見放され、アプリが不足して使い勝手が悪く、サービスではなくモノを売ることに固執して自滅したことが大きな要因です。要はサービス力です。未だに日本人の多くがEVがどうかとハードに固執しているあたり、自滅は必然だったのでしょう。電気業界の中でもソニーはゲーム、音楽、映像系も行っていたのでPanasonicに大差をつけ、世界一サステナブルな企業と呼ばれるようになったのはソフトも含んだサービス力のおかげと見て取れます。一方でトヨタは昔からサービス力の高さ故に販売力があり、今もハード開発以外にも車載linuxなどのソフト面、トヨタレンタカー以外にサブスクのKintoなど車を乗ることを考えた時に非常に幅広く現実的な提案を行っていますが、税金が邪魔しまくるのはさすがお役所仕事といったところなのでトヨタはキレていいでしょう。他にも自動運転技術は高齢化社会ではむしろチャンスであり、地方バスの自動運転など金持ちの道楽に終わらず、現実的な社会問題の解決手段として大きな市場が日本にはあります。ちなみにEVによる価格破壊はアフリカへの古着寄付で現地産業を破壊しているように、日本車の耐久性により中古車で対抗でき、むしろ利益をあまり追求せず戦略的に破壊しに行くべきです。またトヨタにはレクサスがあり、収益性からトヨタではなくレクサスがEVに集中するべき案件です。

さらに補足として日産などがEVに注力することは良いことだと思います。せっかく国内に自動車会社が多く存在するので全企業が同じ道を歩まないほうが日本の経済的将来性が高まります。そもそも他社がやってるから弊社もやるといった猿真似経営しかできない企業が蔓延っているようでは先進国として成長することはなく、いずれ中進国に落ちることでしょう。猿真似で言えば選挙対策として子育て支援を掲げる自治体が増え、当然子育て支援は良いことですが選挙対策のためだけに子育て支援を掲げるのではなく実際に行いつつ、求心力を保つために都市毎に異なる特性を理解した上で全うすべ事業が疎かにならなければと思います。