地理とネットから見えてくる可能性

リモートワークなど、ある程度の物理的な要因を無視できる現状でも完全に地理を無視できるわけではないため、両方を視野に入れつつ考察するブログ

大都会岡山の本当の実力

先に結論

先に結論から記述すると広島と大差ありません。

広島には原爆ドームマツダカープなど国内外問わず有名なものが揃っており、岡山にも後楽園の様に有名なものはあれど広島以下という認識が一般的で、大都会岡山と言う名でおもちゃにされていますが、以下その認識は適切ではないということを記述します。

人口

都市の実力を測る上で分かりやすい指標の一つに人口がありますが、取り扱い方には注意しなければなりません。単純に行政区分で区切られた地域のみで人口を比較しても正確ではありません。例として東京の会社に勤めているが、住宅地は川崎、さいたま、横浜であったり、京都に勤めているが滋賀、神戸だが明石、大阪だが堺であることを考慮しなければ都市の実力は測れません。リモートワークを考慮しても都市で考えるのではなく、都市圏で考慮すべきです。

都市圏の見方は多数ありますが、ここでは通勤10%圏を用います。通勤10%圏は通勤、通学者数の割合が10%以上の都市も考慮する見方です。当然通勤10%圏が絶対というわけではありませんが、比較的実感に近い数値なので用います。 

通勤10%圏で岡山都市圏と広島都市圏を比較すると、

岡山都市圏(約150万人) vs 広島都市圏(約140万人) 2015年比較

岡山市のすぐ隣に水島臨海工業地帯倉敷市が存在するため、岡山都市圏の方が都市圏としては上です。関東で例えると岡山市が東京23区で倉敷市川崎市です。

その他通勤10%圏:https://www.soumu.go.jp/main_content/000575735.pdf

可住地面積

圧倒的に平野部面積で岡山が上です。数値を記述するより見るのが分かりやすいので以下図を見てください。広島平野は狭すぎます。広島空港や広島大学の立地が過去と比べて悪くなったのも必然でしょう。

「広島」「岡山」と文字的には岡山のほうが平野が無く、山間部ばかりの田舎臭さが滲み出てるのも岡山がおもちゃ扱いされる背景の一つなのかもしれません。

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平野が広いとその分農地、住宅地としても適切があり、岡山は岡山市内は路面電車、倉敷の工業地帯にも鉄道が整備されており、無理なく利便性と経済性が両立しやすくなっています。

ただし広島市は可住地が限られ、密集してしまうことで都会っぽさが出てむしろメリットなのかもしれません。

アクセス性

岡山の方が中四国の中心地としての適性が高いです。

岡山の東に姫路都市圏、西に福山都市圏、南に高松都市圏、北に津山都市圏が存在し、中四国の中心として適切です。

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( ↑ 空路を除く人の移動経路)

( ↑ 物流経路、ピンク線が鉄道貨物、青線が海上輸送、白線が自動車道)

広島は中四国の中心地ではありません。静岡と同じく通過点であり、仙台のような地方拠点都市としては岡山が該当します。

新幹線等の移動の高速化に伴い大阪等に吸われていましたが、現代は一部リモート化も進みほど良い距離感と言えます。

 

空港に関してですが、岡山、広島ともに残念な点が多く見られます。

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「広島空港」は全国的にもアクセスが悪いことで有名で、理想は在来線とも接続しやすい岩国空港岩国錦帯橋空港)を山口県ですが広島国際空港として機能させることでしたが、岩国の米軍の存在から非現実的であり残念ですが現在の立地を受け入れるしかありません。

岡山空港(岡山桃太郎空港)」はバスで約30分で岡山駅までアクセスでき、一見して良さそうに見えますが山間部ゆえに拡張性に問題があります。

理想は現在の岡山空港ではなく在来線にも近い農道空港である「笠岡ふれあい空港」の様に、岡山経済圏と福山経済圏の中間地に岡山の拠点空港を建設して利用者を増やし、利用者の多さから岡山空港からアクセス可能な空港を増やして利便性を向上させつつ、鉄道とも協力して利便性以外にも環境へも配慮することが理想ですが、米軍の存在から広島空港が広島経済圏と福山経済圏の中間地に存在していることから福山経済圏は諦めて、香川と協力して高松空港を建設せずに岡山経済圏と高松経済圏の間に岡山と香川用の空港を建設して在来線と接続させるべきです。(もしくは姫路経済圏と岡山経済圏の間)

営利団体である鉄道会社と航空会社の両者だけでは対立するのはごく自然ですが、社会インフラとしての効率を考えると協力したほうが良いのは自明であり、その協力の橋渡しするのが行政機関の役目のはずです。

広島や岡山に限らず日本の空港の立地の悪さは千葉にあるが東京ディズニーランド命名する様な柔軟さを行政側が持てればこの様なことが起きないと思うのですが非常に残念な点が多く見られます。

災害耐性

その他に災害リスクの低さを岡山はアピールしています。確かに現在の調査結果では岡山市の中心地に目立った断層は存在せず直下型地震のリスクは低く見えますが、日本である以上地震は起きるので正直過信しすぎるのはよくありませんが間違いなく巨大津波とは無縁です。

気候は広島と同様に瀬戸内海式気候、火山も存在せず、様々な災害に対して比較的優位であることから可住地として非常に魅力的な土地であることに違いありません。

産総研:活断層データベース

医療

西日本全体に言えることですが医療が充実しています。その中でも岡山大医学部は医学部の中でも名門であり、より先進的な医療を受けられる拠点となっていま。
(ただエムスリーのような企業が岡山、せめて西日本で誕生しなかったのは残念です。)

データセンターの立地適正

ITに関してデータセンターの立地としても条件によって適正があります。国内でデータセンターを立地させる場合は災害耐性、負荷分散の観点から2拠点以上のデータセンターを保有することが好ましく、2拠点を選定する場合において岡山や姫路付近(or滋賀付近)と北関東付近に優位性があります。両者ともアクセスの集中する関東と関西の近くに位置することからパフォーマンス面においても優位性があり、東京と大阪ほどコストがかからず、両者が東西に別れていることから災害耐性にも優位性があります。ちなみにデータセンターは税収は潤いますが、雇用は10人いれば良い程度なので、人材確保も実はそこまで考慮する必要はありません。

データセンターにおいて重要である電力も岡山は鹿島臨海工業地帯の存在から安定電力である火力発電所が複数存在し、最悪の場合関西、四国電力も視野に入れることができます。安定電力ではありませんがSDGsの推進から重要視される再生可能エネルギーである太陽光発電においても平野の広さと雨天の少なさに利点があります。

ただし中国地方は原子力発電所が再稼働できていないことはエネルギー戦略的に残念と言えます。一応島根の西部が原発の立地場所としての適性が高く、平地がほぼなく過疎化不可避だが山陰道としてある程度インフラは維持されつつ、過疎地ゆえに万が一事故を起こした場合でもリスクが低いため、データセンターに限らず今後のためにも戦略的に原発を建設すべきでしょう。

国内事業者が国際展開を行う場合は沖縄や九州も無視できず、AWSの様に下手にコストを気にしすぎるよりパフォーマンスを重要視した方が費用対効果が見込める場合は普通に東京、大阪を選定すべきです。

日本のネットワーク網(総務省より):https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/japanese/papers/h12/html/C2311000.html

経済

さすがに広島の方が上です。もともと広島は軍都として国から資金が流れていたこともあり、岡山より優遇されていました。行政的な目線で岡山より広島の方が重要であった影響が今日まで多少なりとも影響しています。(東洋工業「現マツダ」が軍需会社法軍需会社に指定されたり等

東京の様に国を代表するレベルの大都市であれば第二次産業を他産業を差し置いてまで重要視する必要はありませんが、地方都市においては異なります。多くの雇用を安定的に抱えることができ、税収も安定するので公共事業も安定して行える様になる第二次産業は地方都市において生命線とも言えるほど重要です。パルプ産業の様に時代によって斜陽化する可能性は当然ありますが比較的安定です。その上で世界的競争力のあるマツダやマイクロンの工場等を抱えつつ、デルタ地帯や多数の島々の存在により強制的に多数公共事業を行う必要があることで公的資金も民間に降りてくる広島は中四国の中で最も経済が安定化し、その安定から第三次産業も発達しています。

岡山も水島臨海工業地帯を抱えますが、影響力、認知度等で広島に負けています。ただしあくまで広島と比較すると劣っているだけであり、決して悪いわけではありません。水島臨海工業地帯は日本屈指の工業地帯であり、クラレや工業以外にもベネッセなど、多くの有力な企業が存在します。その他に静岡の様に新幹線の「のぞみ」で素通りされることなく、山口の様に工場は多くても中心的な都市が存在せず、ただ国道に沿って店が存在する様な地方と異なり岡山市が中心として機能することから飲食、不動産業も機能しています。

中小規模では岡山も広島も手堅く日々の生活を豊かにしてくれる企業が数多く存在します。Amazonとかで身近なサンワサプライのような企業以外にも、水産系、農業も岡山大の安場教授が研究会顧問を務める日本発の環境制御規格「UECS」を活用したスマート農業など手堅く事業が展開されています。このようなコスパがなにより重視されるものは首都圏のような土地代、人件費により無駄に高単価にならざるを得ない首都圏では成し得ないものでしょう。

ちなみに個人的に、戦後復興の象徴として被爆した広島が無理なく程よく繁栄していることは、日本の国際的な価値を高めているとも言えるので、今後も広島は衰退してほしくないです。

岡山は普通に都会

今回私は広島と比べましたが東京を基準にしたら広島も岡山も田舎であり、国際都市の大阪ですら地方都市になります。岡山は札仙広福とかいう枠組みがあるせいで損しており、関関同立産近甲龍の枠組みがあるせいで損している近大に近いものを感じます。

岡山を大都会と呼称するのは流石に無理ですが普通に都会です。あと上京ほやほやの田舎者や、住んでいる地域で謎マウントをとる論理性が崩壊した残念な人ほど憧れる高層ビルとして100mクラスのビルなら一応存在しており、ネットも普及した現在では特に地方都市において高層ビルの必要性は低く、わりと適切な都市開発を行っていると思います。

高層ビルが多いからといって良い街とは限りません。基本的に高層ビルは駅直結や商業施設の充実度などの利便性や快適性やらを求めて、一部は謎ステータスのためにお金に余裕がある人が利用するものですが、高層すぎると利便性は減少しますし、災害に対して厳しくなります。高層オフィスビルで働いたことがある人はエレベーター渋滞など、そうでなくても火災、断水、ビル風などで理解できるのではないのでしょうか?都市の求心力向上のため街のシンボルとして、税金用として経済規模に応じて高層ビルがあっても良いかもしれませんが、普通に利用する分にはどんなに高くても100mぐらいがちょうど良いものです。